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”本を通して人を知る、人を通して本を知る |
ビブリオバトルの魅力はこの一言につきる” |
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小売店で接客販売業務を10年ほど勤めた後、流通に興味を持ち貿易会社に転職しました。さらに英語を使った貿易の仕事を磨きたいと思い輸入事務として有隣堂に転職しました。当初は洋書・洋雑誌の手配業務を担当していましたが2年で異動になりました。その後文房具の仕入れ担当、ICT(※)推進事業部などを経験し、3年前に現在の部署に配属となりました。
社長特命担当という部署は、直接的な特命としての新規事業の企画やリサーチ等を行う一方、有隣堂のブランド維持・強化を目的として店舗と図書館や学校といった自治体関連機関や企業、団体等の地域の人たちと連携し文化振興に努める活動も行っています。その中のひとつがビブリオバトルです。
(※インターネット・コミュニケーション・テクノロジーの略)
もとは2012年にビブリオバトルを知り、個人的に外部イベントに参加したり、所属している社会人サークルの仲間に声を掛けて自主開催したりしていました。喫茶店の一角でコーヒーを飲みながらプライベート空間で行う小規模なものです。そのいくつかの取り組みが徐々に盛り上がってきたところで会社にも企画を出し業務としても取り組むことになりました。
ビブリオバトルは、書店に来ても買わずに帰る方、ネットで本を買う方、そもそも本を読まない方にどうしたらお店に来て頂けるか、本に興味を持ち手に取って頂けるかということに対してとても有効です。また店舗以外の場所でも行うことで、地域に暮らす方々の顔を見て話し、関心事や行動範囲を知ることができる重要なイベントです。
「本を通して人を知る、人を通して本を知る」という一言につきます。これはビブリオバトルを2007年に考案された現在立命館大学教授・谷口忠大氏によるキャッチコピーです。(『ビブリオバトル―本を知り人を知る書評ゲーム』谷口忠大著・文春新書より)初対面の人とでも本が話のきっかけになります。本を介して人と人が繋がることが出来るのが魅力ですね。
そして本を紹介するだけでなく、その後の観客と発表者(バトラー)の質疑応答が実はとても大切で、このディスカッションタイムが全体の盛り上がりを左右すると言っても過言ではありません。否定的だったりいじわるな質問はなし。「その本とはどこで出会いましたか?」「好きなフレーズは?」とプレゼンの中で出てこなかったことを掘り下げていきます。「ネタバレになるので読んでみて」と返すことも。観客から助け舟のような質問が出ることもあります。その質問によって知識の補填がなされさらに興味が湧くのです。その場全体で一冊の本を理解して新しい発見がある。そんなやり取りが醍醐味ですね。人数が多すぎると受身になりがちなので、20~30人ぐらいが和気あいあいと盛り上がります。
また話が上手でも、有利ではあるけど必ずしもチャンプ本に選ばれるという訳ではないです。拙い発表でも熱意が伝わると「こんなに熱く語られる本とはどんな本だろうか、もっとこの人の話を聞いてみたい」と興味が湧きます。様々な本と人にスポットが当たる点がいいなぁと思います。
昨年8月に小田原駅ビル・ラスカ小田原で行ったお酒イベント「ぐびっといこう!神奈川の酒・農と本を味わう会」です。神奈川の酒と農を伝えるフリー冊子『かながわ酒・農マガジン【goo‐bit ぐびっと】』を手がける「ぐびっと」代表の鈴木啓二朗さんから「何か一緒にやりませんか」とお話を頂いたのがきっかけです。蔵元さんや酒米農家さんもお呼びして酒造りを知ってもらう場にしようということになり第1部は「酒」をテーマにビブリオバトル、第2部は「ぐびっと」鈴木さん進行のもと蔵元さんと酒米農家さんの”酒農会談”、そして第3部は蔵元の工場長さんのふるまう燗酒試飲会という豪華企画を考えました。ラスカのイベント会場は原則飲食禁止なのですが、「お酒のイベントなのにお酒が飲めないなんて・・・」とラスカのご担当者様と相談し、特別にトライアルとして許可を頂けることになりました。そうなるとお互いノリノリで企画段階で楽しさが増し、蔵元の川西屋酒造店さんの作る銘酒「隆」と「丹沢山」を扱う同テナントの成城石井さんも巻き込んで試飲用のお酒の提供を頂けることになりました。
イベント当日は定員30人が満席!ビブリオバトルは知らなくても「酒」というキーワードでお客さんが集まりました。蔵元さんたち地元の方々の繋がりからの参加もあり、お酒好き・本好きな人同士で賑わいました。地元のものを飲んだり話を聞いたりしながら、本を通して地元のことを知ることが出来るイベントになりました。お酒と本は相性がいいです。このようにビブリオバトルにプラスアルファで何か体験ができたらいいなと日々企画を考えています。
何でも楽しむことだと思います。仕事は本気でやりますが、本気で楽しめないとやりたくない(笑)。本人が楽しそうにやっていれば周りも「面白そうなことやってるな」と興味を持ってくれると思います。見ているうちにいつの間にか巻き込まれているってことありますよね。そして楽しむ為には何でもやってみることが大切ではないでしょうか。以前は、自分は決まった仕事を定期的にやる方が性に合っていると思っていましたが、5年ほど前ICT推進事業部にいる頃にSNSに出会って考え方が変わったと思います。
同事業部では当時企業がやり始めていたツイッター等を使った情報発信について研究をし、有隣堂での活用方法を模索していました。ツイッター、フェイスブック、mixiなどひと通り個人アカウントを開設し、セミナーにも出まくって勉強しました。その中で抜群に情報発信が上手な人がいることに衝撃を受け、個人でも世に発信し人や社会に影響を与えることが出来ることを知り、自分にも何かできるかもしれないと勇気が出ました。自己表現の武器を手に入れ、殻を破れたと思います。SNSは諸刃の剣で良い面も悪い面もあります。初めは怖い思いをしたこともありましたが、失敗をする内に感覚を掴んで、交流の幅が広がっていき、そのネットワークやノウハウを仕事にも活かせるようになりました。
ビブリオバトルをきっかけとして業界全体を巻き込むようなことにチャレンジしてみたいです。例えば絶版本や重版がかからず世間から消えていこうとしている本を復刊させるような。ビブリオバトルは読みたい本で決まりますので、ニーズが見えます。そこから復刊企画に繋げられたら、本にとっても読者にとっても作り手にとっても幸せなことだと思います。
また書店対抗ビブリオバトルもしてみたいですね。書店ごとに強みや書店員さんの趣味思考が違うのでとても面白いのではないでしょうか。
本の面白さをもっと外に発信していきましょう。他社だからとか競合だからと壁を作るのではなく一緒に盛り上がっていければ、本をより多くの人に届けられる、「本の世界って面白そう」と思って頂けると思います。さらには、本だけじゃなくて「書店員さんも面白い」とお客さんに知って頂きたい。面白い本を知っているのは絶対面白い人ですから、是非皆さんのお顔を見せてください。
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