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”作家と読者が幸せになる為に、我々は存在している” |
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50年前の私が2歳の時に、本好きの父親が広島に本屋を開業しました。当時約5坪の店舗です。創業して間もなく、たばこ屋やパン屋等の軒先で、雑誌のブックスタンド販売を3000~4000件展開していました。その後、広島・山口・岡山・愛媛を中心に郊外店を多く出店した時代もありました。学校外商等に基盤を置いている、大手チェーン店の様な既得権を持っていなかったので、時代と共に柔軟に業態を変えてきた会社だと認識しています。
約20年前に家業を継いだ時は、郊外店を20店経営していました。この頃には運営がうまくいかなくなっていて、試行錯誤はしましたが正直「このままだとお先真っ暗やな」と思いました。違う所ににフィールドを作っていかなければいけないという想いは強かったです。店舗数を減らしつつ、次のビジネスモデルに転換してきたのがここ10数年です。
約15年前に、インターネット通販がビジネスチャンスではないかと思い、当時創業してまもない楽天市場さんに出店しました。ネットに本を並べるだけでは当然売れませんので、何か個性を持たせようと考え、BL商材に目をつけました。
一つ目の理由は、このマーケットの奥行きが広いことです。一見分かりづらいですが、毎年膨大なタイトルが出版されていて実は市場規模が大きい。また、ネット通販を始めてから分かりましたが、非常に熱く根強いファンが多いです。月にコミック100冊を購入されるお客様も少なくないです。こういったジャンルでないとまず商売になりませんよね。
二つ目の理由は、本屋が苦手なジャンルだからです。BL商材の需要が大きいことを分かっていない本屋も未だに多いです。他社が一生懸命売っている商品に、我々が注力してもあまり意味がない。最寄のお店で買えばいいですから。
また、BL好きなスタッフが社内にいたというのも、ひとつのきっかけでしたね。
【Book】売場面積半分でBL関連商品、残り半分でその他コミックスを販売。コミックは4万冊を蔵書し、町田近辺では最大級の蔵書数を誇る。 |
インターネットをしない人口が、日本には4割以上いると認識しています。さらにネット通販を利用しない人はもっと高い比率で存在します。ですから、お客様の全てをECでカバーすることは難しいです。実際、楽天市場さんの主力客層は40~50代ですし、我々のサイトを利用するお客様は30~40代がメインです。つまり、20代以下の若い層はECだけではカバーできない。巨大なサイトを運営しているamazonさんであれば、全ての客層をカバーできると思います。そういったビジネスモデルは既にやっている会社があるので、我々はそこに参入できません。ECだけに絞るとどうしても規模競争に巻き込まれますから。
【*EC:Electronic Commerce(電子取引)の略。ネット通販の総称。】
お客様との関係性を重視する我々の様なポジションには、店舗とECが両方あることは非常に重要です。リアル店舗ではお客様と直接関係が築かれ、インターネット通販では商品に込める想いでお客様と繋がることができます。それぞれで、どうしてもお客様とズレができてしまうのでお互いを補う役割があります。そうでないと我々の強みが発揮できません。
今回町田(*東京都郊外・新宿駅より電車で約30分)を選んだのは、お客様との関係を密にし、それを価値化するビジネスができるのは東京都 区内にはないと思ったからです。集客力が強すぎる場所では体験は売れません。そういった場所でカフェを展開する場合、当然予約制になり滞在時間を制限せざるを得ないです。お店側からすると作業に近くなってしまいます。都心から離れていて、時間的なコストがかかる方がある程度お客様が減り、我々らしくなります。大規模プレーヤーが既に居る土地で無理に戦う必要はないですよね。でもお客様からはなんで秋葉原、池袋じゃないのと怒られていますよ(笑)。
【Gallery Cafe】週毎にコラボ作家を変えて展開。等身大パネルやイラスト・原画などを展示。メニューは自社で考案している。 |
コンテンツビジネスですから、作家と読者が幸せになる為に我々は存在しています。作家がいないと読者も我々も存在しないのがこのジャンルです。ですから作家さんにしっかりと、最高の創作意欲を提供できるビジネスをやっていきたいです。それは読者の幸せに繋がりますね。しかし、〔読者の幸せ=作家の幸せ〕には必ずしもなりません。なぜなら、両者の関係が断絶しているから。本を介した間接的なやり取りはしていますが、直接コミュニケーションをとっていませんよね。SNSという手段もありますが、悲しいことにネットの中では感じの悪いコミュニケーションの方が多い様です。我々がリアルの中にいるメリットは、作家さんに前向きなファンが居ることをしっかりと伝えられることです。そこを大事にしていきたい。
当社のポリシーは『世界中に笑顔を、笑顔で届ける。』です。これは3年前に数名の社員が「自分達で自分達の理念として作りたい」と言って、自主的に作ったものです。『場が豊かになることが、我々の幸せに繋がる』という想いが込められています。この想いを体現していきたいです。
社長が褒めることはモチベーションコントロールとしては使えるんですが、長くは続かないですよね。当社は丁寧な仕事をコツコツと続けることを大切にしていますが、「その仕事は大事なんだ」といくら言葉で説明しても実感は沸きづらいものです。
私が言うよりもお客様が評価してくれたことが、スタッフのモチベーションに繋がっていると思います。改善改良の結果、多くの方に「すごいよね」と言ってもらえて仕事にプライドを持つスタッフがたくさんいます。自分のやっている仕事には価値があるんだと、自分で思って初めて価値になるじゃないですか。自信を持ったスタッフの仕事の質は下がりません。
実際に梱包チームは単なる作業員という気持ちではなく、自分達がやっている丁寧な仕事が、実は業界の中では普通じゃないすごいことなんだと誇りを持って仕事をしています。特に作家さんからは、「やはりコミコミさんは商品に対する意識が違う。作品を丁寧な仕事で読者に届けてくれる人達がいることは、とても有難い」という声をいただけます。作家さんがお客様として商品を購入した際にそう評価してくださるのです。そういった言葉を社内の隅々まで届けてあげることがとても大切ですね。
【Smile&Happy】店内は作品や読者への愛に溢れていて、良い関係を築いていることがうかがえる。 |
我々は他の企業がやっていないことを『常に』やり続ける会社でありたいと思っています。その上で、出版文化をなんらかの形で守っていきたい。この業界で必要な存在でありたいです。その為にできることを一生懸命見つけてやっていきたいと思っています。その一つが場を作ることであり、流通を作ることであり、体験をしてもらうことであり、毎日が試行錯誤の連続です。私達がやったことが将来当たり前の価値として多くの人に受け入れられていたら、それは素晴らしいことですね。
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